「兄が居なくなって、弟の日和も神主の仕事に興味を持つようになったみたいです。それに、私の仕事が忙しいのも見ていてくれたので、父や兄の後継をやりたいの言ってくれました。神主になるための大学に入り直して、今年度卒業なのです」
 「そうだったんですね。期間限定の神主さん………その間に葵羽さんに会えてよかった」
 「私もです」



 出会った神社、そして神主である彼。
 その場所にもう彼はいなくなってしまうのだと思うと、寂しくなる。けれど、彼は大好きな音楽で生きていきたいのだと言うのはとてもよく伝わってくる。それならば、彩華は応援するだけだった。
 それにあの素晴らしいピアノの音色を他の人にも伝えたいと強く思った。




 それからしばらくの間、2人で朝早くのおしゃれべりの時間を楽しんだ。
 話をして少しの沈黙からキスをして抱きしめて合って、またどちらかが話す。
 そんな幸せな時間を過ごしているうちに、少しずつ部屋が明るくなってくる。


 「そろそろ……起きなきゃ……」
 「彩華さん………今度、クリスマスの買い物に行きませんか?」


 葵羽は、彩華の髪をとかしながらそんな事を突然言い出した。
 確かに彼とクリスマスを過ごす予定ではあったけれど、買い出しとはどういう事だろうか?そう思って、彼の顔を見つめると、少し恥ずかしそうに笑う。