七瀬と和解した数日後の夜。

私は七瀬と通話で談笑中。

そんな中七瀬が話題を変えた。

「そういえば、華凛が谷中くんに告る日いつなの?」

「明日だよ」

「・・・明日?!緊張感無さすぎじゃない?」

「告白って緊張するもの?」

「え?するんじゃないの?私もしたことないから知らないけど」

「そうなんだ。今のところ全然緊張してない」

「そもそも華凛って緊張なんてしたことあるの?」

「ない!!」

「多分そこ元気に答えるとこじゃないよ」

七瀬笑いを堪えきれてないよ。

「まぁ頑張ってね」

七瀬の応援が安心する一時だった。





次の日。

玄関を出ると既に七瀬が迎えに来ていた。

いつもより早起きしちゃったから早めに出てきたのになぜ七瀬が先にいるのか・・・。

これぞ王子様パワー?

女子を絶対待たせないとか王子様の基本?がなってそう。

元気よく階段を降りると歩く前に私が話しはじめた。

「七瀬・・・。お腹痛〜い」

「あら珍しい。どうしたの?」

「今日告白する日だって思ったら朝からずっと調子悪くて」

「それ・・・緊張じゃない?」

・・・。

やった〜!!緊張できた〜!!

え?というかこれ喜んでいいの?

それを察した様で七瀬が声をかけてくれる。

「程よい緊張はする事に対していい影響を及ぼすって聞いた事あるよ。本当かどうかは知らないけど」

じゃあ喜んでいいのかな?!

やった〜!!!

顔が百面相になっていた様で七瀬が必死に笑いを堪えてる。

そこは笑っていいよ。恥ずかしいけど。

そこに悪魔の声が。

「お前ら玄関の前でそんなに喋ってるけど早く登校すれば?」

純一こそ見てないで早く行けばいいのに。

「人生初緊張報告くらいいいじゃん」

「華凛が緊張・・・とうとう壊れたか」

「はい?告白くらい緊張させてよ」

「瞬に?」

この時私の何となくの後悔は更に後悔する事をまだ知らずそのままうんと答える。

「余り上手くいってほしくない」

「なんでそんな事言うの」

ちょっと拗ねたみたいな言い方になってしまう。

「なんでって・・・好きだから」

それ・・・今言う?!状況考えてよ!!

うわぁー。めっちゃ悪戯な笑み浮かべてるわ。わざとだこいつ。

「純一くん、なぜそれを今日告白する人に向かって言うかな?少しは華凛の事考えてよ」

七瀬がピリピリしてるし。

それなのに純一はスルーして登校しだすし。

ついでだから純一と登校する。

「谷中くんに会うの気まずいかも・・・純一使って隠れよ」

「好きにすれば」

純一こういう時は優しい。

そんな時。

「華凛!純一くん!石井さん!」

「谷中くん!」

あっ・・・反応してしまった。

「珍しいよね。3人が一緒に登校するの」

「偶然一緒になって」

「そっか」

谷中くんの笑顔がいつも以上に眩しい気がする。

その時七瀬がコソッと話しかけてくれた。

「華凛、谷中くんに話あるって言ってるの?時間指定とかちゃんとしてる?」

まだだった。

七瀬に軽くお礼を言って谷中くんを呼ぶ。

「話たい事があるから4時半に体育館裏に来てほしいんだけど・・・空いてる?」

「いいけど・・・今じゃダメなの?」

「どうしてもその時間がいいの!!」

いいよと笑ってくれる谷中くんに安心する。

けど、先程の純一の言葉を思い出し、ため息をついてしまった。

谷中くんが心配してくれるけど全部話す訳にもいかず返答を濁した。

・・・なのに!!

「俺があんな事言ったからな」

純一、一言多い!!

「本当だよね。なんで朝っぱらからあんな事言うかな」

七瀬それ言わないでほしかった!!

「純一くん、華凛に何言ったの?」

ほら〜!!こうやってピリピリしちゃった!!

それでも純一は躊躇いなく告ったとか言うからもっとピリついてるよ!!

「2人とも喧嘩しないで」

それを聞いて純一は謝ってるけど・・・。

「どーもすいませんでした」

それじゃあ反省の色伝わらないよ?!私はわかるけども!!

「反省してる?」

ほらー!!谷中くん余計にピリピリしてる!!

何とかカバーして一件落着したけども!!

そんなこんなで学校に到着。

純一に呼び止められる。

「頑張れよ」

そう言った時の純一は少し寂しそうで・・・。でも私はありがとうとしか言えなかった。





放課後。

今は4時25分。体育館裏に向かいながら緊張を覚える。

ちゃんと言えるかな?

・・・谷中くんもこういう風に緊張したのかな。

そう考えるとすごいな。告白するって。





体育館裏に着くと既に谷中くんが居た。

「待った?」

「ううん・・・あのさ僕も話したい事があるんだ。先にいいかな?」

どうしよう。

その話が『別れてください』なら私この気持ち言えないかも・・・。

そんなの絶対後悔するに決まってる。

後悔するのだけは・・・。

「やだ!!!」

大きい声が出てしまう。

でも後悔したくない。

軽く深呼吸をする。

「私、谷中くんが好き!!ちゃんと付き合いたい!私は子どもっぽいし、わがままだし、恋愛経験もまだまだだけど、こんな私でも良ければ付き合ってください!!」

今なら後悔しないで済むと思う。

好きな人に告白してもらった場所で告白できたから。

「先越されたな・・・」

谷中くんが少し残念そう。

「僕も華凛が好きだよ。よろしくお願いします!」

谷中くんが優しい笑顔で応えてくれる。

「よかった〜」

気づくと涙が出てる。

谷中くんに心配させてしまった。

そこで不安になっていた事を話す。

話し終わると谷中くんが私を抱きしめ頭を撫でてくれている。

安心して涙がボロボロとこぼれる私を泣き止むまで撫でてくれたその手はとても温かくて私の心まで温めてくれた。