キーンコーン、カーンコーン。
すっかり聞き慣れたチャイムが鳴り
国語の用意を机にしまい、
私は友達の元へ向かった。

「なっちゃん!」
「あ、結花!」
この女の子は私の友達、七海|《ななみ》。
仲良くなったのは、入学した頃に
席が隣同士だったのがキッカケ。

「そういえば、結花。
さっきの国語で指名されてたけど、
なんか読むの変だったよ?」
「そうかな?」

「うん。なんか周りを気にしてて、
変に緊張してた、みたいな」
悩み事をするみたく腕を組んで、
そう話すなっちゃんの両隣には
見たことのある女子二人がいた。

「き、気のせいじゃないかな?」
「うーん。そっか」
その女子二人は、
なんだか見覚えがある。

思い出しながら、
その女子たちを見ていると
なっちゃんの左にいた女子が
口を開いた。

「もしかして、さっきの授業で
教科書、読んでた鈴木さん?」

その女の子は頭の高い位置で
ポニーテールをしていた。
首を傾げると、ポニーテールの先が
軽やかに揺れた。

「そうだよ」
微笑んでそう言うと、
彼女は目を輝かせた。

「やっぱり!
ななりんから色々と聞いてて、
仲良くなりたいなと思ってたの!」

ななりん……?
胸に何かが刺さるような気がした。

「あ、あなたが七ちゃんの友達の……」

今度は、なっちゃんの右にいた女子が
そう呟いた。

七ちゃん…?
また胸に刺さる感じがする。
それでも、私は笑顔を持ちこたえた。

「えーと、なっちゃん。
彼女たちは?」
助けを呼ぶように
なっちゃんに話しかけると、
はっとしたような表情をした。

「あ、結花にはまだ言ってないのか。
実は二人とも、私と幼稚園が
同じだったんだよ。
小学校は離れたけど、
中学校で再会できたんだ」

とっても嬉しい顔で
ウインクをするなっちゃん。

そんな顔を見た瞬間。
ーチクリー
また胸が痛む。

「そういえば、
幼稚園でよくお絵描きしてたよね」
「してたしてた!
絵しりとりもやってた!」

「確か、みっちゃんは画力なくて
絵しりとりで苦戦してた!」

話の輪になっちゃんも加わり、
三人は思い出話に花が咲く。
三人だけが知る、
私には関係のないこと。

私は置いていかれた。
三人がだんだんと遠い存在に思える。
当たり前だけど、
ただものすごく寂しかった。

必死に涙を堪えて、
私は歩き出した。

「あ、結花?」と呼び止めた
なっちゃんの声ですら
遠いもののように思えてくる。

私はそのまま無視をして、
トイレに向かった。