ふたりには時間が足りないくらい、二人でやりたいことや話したいことがあふれている。
こんなにも明日が楽しみなこと、二人はなかった。
未来への希望や、期待に気持ちがどんどんと膨らむ。
その心地よさを感じながら華は自分の薬指に光る指輪を見ていた。

「お待たせしました。豚とんかつ定食と鳥とんかつ定食です。たくさんお替りしてね？ご飯もサラダもお漬物もお味噌汁も、おかわり自由だから。」
とおばあさんが二人をおもてなす。
「ありがとうございます。」
ふたりが頭を下げると「私たちにもお二人のように若かりし頃があったのよ。懐かしいわ。」とおばあさんが二人を微笑みながら見つめた。
「いまじゃあ憎たらしいくらいの時もあるんだけどね。ふふっ」
厨房のおじいさんに聞こえないようにおばあさんが二人に話す。
それでもとても幸せそうで、隆弘と華は温かい気持ちになった。

食事もどれもおいしくて、懐かしい味がした。
体の芯から温まる料理は、料理の熱だけでなく二人の過ごしてきた時間の重みを感じるような体にじんわりと広がる深い温かさだった。