幼なじみの不器用な愛情

華はそんなことを考えながらギュッと唇を結んで歩き出した。

「華~」
講義のある教室へ向かう最中も華はいろいろなところから声を掛けられる。
そのたびに華は笑顔で手を振った。

ふと見上げると桜のつぼみがふくらんで、今にも咲きそうになっている。


華はもうすぐ誕生日。
春の華やかな桜が咲いているときに華は生まれた。
もうすぐ22歳。

きっと誕生日もひとり・・・

『華の名前はね、お父さんが桜の花のように、華やかできれいな心の女の子に育ちますようにって願いを込めてつけてくれたのよ?』
母の言葉を思い出す。
『それにね、桜の花びらも、葉も、みんな一人じゃないでしょ?華が一人で寂しい思いをしないようにって名前。』
華はそんなことを思い出しながら桜を見ていた。