ふと恵梨佳さんの方を見ると、少しさっきより頬の色がよくなっているような気がした。何か安心したような表情に見えた。
話をしている相手は支配人のはずだ。普通なら上司と部下の関係というものだろうが、彼女が話をしている先の人は、まったく違う立場の人の様に感じる。
まるで、お互いに想いを寄席う二人が、会話しているかのようにさえ思えてしまうほどだ。
僕の視線に気が付いたのか恵梨佳さんは、ちらっと僕の顔に目を向けた。
そのあとスマホを耳から離し僕の方にやって。
「ごめんね、ずいぶんと待たせちゃって」
「いえ、そんなことないですよ。はいこれ、診断書です。会計は明日でないと出来ないそうなので、もう帰ってもいいそうですよ」
「そう、ありがとう。ところで、さっき一緒にいた看護師さん。亜崎君の知り合い? それとも彼女?」
「え! そんなんじゃないですよ」
「うっそ、ものすごく可愛い人だったじゃない。それに何となく亜崎君、彼女の顔ばっかり見ていたし」
恵梨佳さんも僕のことを見ていたんだ。

