「どうしてかなぁ、そんな噂が飛び交っているの? 亜崎君あなた教養学部の人と物凄い喧嘩していたって聞いたけど本当? それも相手は女性なんだって」

まさに噂に尾びれが付いている。


黒縁の眼鏡をはずし、彼女は僕に近づいてきた。

「素直に白状したら?」


眼鏡をはずした有田優子のその姿は綺麗だ。まるでモデルのような風合いを感じさせる。

そんな女性の目の前で委縮して小さくなっている僕のこの状態を、だれかが見たら、きっと誤解するだろう。

まっとうな誤解をしてくれるのなら僕は救われる。
文芸部の部長に、怒られているという場面であると、感じてくれる人はこの状態でいるのだろうか?


実際に彼女は僕に何かを求めているのが感じられる。それが何なのかはわからない……。多分さっき宮村が「お前わざと言っている?」と言っていたが、やっぱりそういう事なんだろ。

有田優子は僕に今迫っているのだ。自分の欲求をこの僕に受け止めてもらいたいために。