7月。夏も本番になって来て、日差しがギラギラと自分の肌を黄金色に焼こうとしているこの時期。

ド田舎の私立高校に通う伊代一桜は、デザイン室でひっそりと絵を描いていた。
「教授ぅー......いい加減勘弁してよ。何個コンペ出すつもりなんだよ。」
「うるっさいな、お前が全然入賞しないのが悪いんだろ。無駄口叩いてないでさっさと描け。」
『まだ入学してきて3ヶ月なんですけど!!』と教授に怒鳴るが、教授は本を読んでいて、一桜の話を全く聞いていなかった。

彼はデザイン科専門の教師で、名を篠田海刀と言う。彼は31にしてまだ、女性との恋愛経験の無い童貞である。

「あーあ、もっと絵が上手かったら、こんなのもっとスラスラ描けたんだろうなー.......。」
大きな独り言を教授にわざと聞こえるように喋る。
こんな時にも無視かよ。
ムスッとしながら、B4のケント紙に