「ポッキーゲームな」

そう言ってすぐ、高岡があたしと逆側のポッキーをくわえた。

う、嘘でしょ……!?

動揺しまくる中、高岡の口でプレッツェルが噛み砕かれる振動が伝わってくる。
口元を見る高岡の表情や今までにない距離、高岡とポッキー1本だけで繋がっている状況に、あたしの心臓は爆発寸前だ。

ドキドキしすぎて不整脈にでもなったらどうしてくれるの……!

顔が熱くなって、近づいてくる高岡の顔を見ていられなくて、目をぎゅっと閉じたとき、ポキッと勢いよくポッキーが折れた。

「あーあ、俺の負け。じゃあ、美波、俺にしてほしいこと言ってよ」

負けたと言いながらも高岡は楽しげにポッキーを食べている。

ポッキーは途中で折れたのだから高岡の口が触れていたわけではないのに、食べるのが恥ずかしくて思わずうつむいてしまう。

でも今口にくわえているポッキーの片割れはあたしが食べるしかなくて、そっとポッキーを口の中に入れて噛んで、なんとか飲み込んだ。

高岡はただの友達にこんなことをするの?
……もしかして、同じ気持ちを持っているって自惚れてもいいの?
答えを知りたい。

ポッキーが詰まった感じの苦しさがありながらも、なんとか飲み込み、深呼吸をして口を開く。

「……高岡とゲームがしたい」

「なんのゲーム?」

「今思ってることを、せーので言い合うゲーム」

予想外だったのか、高岡は目を丸くした。
でもすぐににっと笑う。

「うん、いいよ」

「……お互いに違う言葉だったら、負けだよ。そのときは……この手、離してね」

それと一緒に、高岡への気持ちも封印するから。

「いいよ。まぁ、勝つ自信あるけど」

どこからその自信が来るのか不思議でたまらないと思いながら高岡の笑顔を見ていると、包み込まれるだけだった手に、高岡の骨張った指が絡んできた。

……もうダメ。早く言いたい。
膨らみすぎたこの気持ちを高岡に伝えたい。
砕けるのはそりゃ嫌だけど、もう結果なんてどうだっていい。

「……じゃあ、せーの……」

絡み合うふたりの手に同時に力がこもった後、「好き」という同じ言葉があたしと高岡の口からこぼれ落ち、重なりあった。