「教えてよ」
「え?」
「昨日のって、ポッキーだけの話? この世に生まれてきてくれてありがとうってやつとか」
核心をつかれ、息をのむ。
頭の回転が速い人はこれだから嫌だ。
なんでも先回りして、簡単に答えを探り当ててしまうから。
……でも、気づいてくれたことが本当は嬉しい。
「……そうじゃない、って言ったら、高岡はどう思うの?」
「なんだよ、質問返しはズルくない?」
「そうかな……」
1メートルくらい距離をとって座っていた高岡がイスを寄せてきて、あたしの手を握る。
その瞬間、ボールが跳ねるようにあたしの心臓と肩が跳ねた。
高岡の手は熱くて、さすがバスケットボールを自由に操作できるだけあって、大きい手だ。
どうしよう……好きが溢れ出しそう。身体が熱いよ。
「これ、美波の手作りだよな?」
「……うん」
「やばい。手作りとか、すっげえ嬉しい。ありがとな。大切に使う」
「……うん」
嬉しそうな高岡の笑顔に胸がきゅんと締めつけられる。
「あとさ、これからはもっと美波のことも大切にしていい?」
急に色気を含んだ甘い声になり、ドキッと心臓が跳ねる。
「……ダメ、って言ったら、高岡どうするの?」
「またそういうこと言う。美波って素直じゃないよな」
だって、そんなことを言われたら、期待しちゃうじゃない。
期待させておいて、冗談でしたなんて言われたら、立ち直れない。
「でもさ、美波、頬染めてめっちゃかわいい表情してるし、ダメな気がしないんだよな。ほら、あーんして」
「なに……むっ」
「落とすなよ」
高岡に差し出されたポッキーを思わず口にくわえると、高岡はにやっと笑った。

