Dangerous boy

それが”彼”なんだと言い切れる音緒さんは、違う意味でも、大人の女性なんだと知った。

「まあ、精々頑張って。」

「はい……」

「ちなみに、尚太の交際期間、最高記録はどのくらいだと思う?」

「……1年ですか?」

「ブー、半年。それ目指す事だね、新しい彼女さん。」

そう言うと音緒さんは、席から立ち上がった。


「尚太!私、帰るわ。」

「あっ、そう。また来て。」

「はーい!お金、ここに置いていくよ!」

音緒さんは、カウンターに千円札を置いた。

「あっ、いいよ。この前のお釣りがまだ……」

キッチンから尚太君が顔を出した時には、音緒さんはもうお店にいなかった。


「あーあ。またお釣り、渡し損ねた。」

尚太君は、音緒さんが置いて行った千円札を掴むと、レジの中にある透明な袋の中に入れた。

「お釣り、とってあるの?」

「うん。あの人、いつも一杯しか飲んでいかないのに、いつも千円札置いて行くんだよな。」