Dangerous boy

その時小暮さんは、大きなため息をついた。

「紗和子の事は、お母さんって言わないし。俺の事もオーナーとか、あんたとかしか言わないし。」

なんだか尚太君らしくて、私は笑えてきた。


「あっ。心ちゃん、笑った。」

「すみません!」

「いいのいいの。女の子はね、泣いてるより笑ってる方がいいんだから。」

そう言って小暮さんも笑ったけれど、その笑顔が何となく、尚太君に似ている。


「体調はどう?」

「はい。大分よくなりました。」

「じゃあ、フロアに行こうか。尚太も心配してるし。」

「はい。」

私は立ち上がると、休憩室から出た。


フロアには、もうお客さんが入っていて、尚太君は忙しそうに接客をしていた。

「仕事が落ちついたら、尚太には俺から話すから。」

「はい。」

私は何から何まで、小暮さんにお世話になりっぱなしだ。

「小暮さん。」

「なに?」

キッチンへ戻ろうとする小暮さんに、話しかけた。