へへへっと笑う環奈は、もう尚太君の事、好きではないんだろうか。

「……環奈はさ。尚太君の事、忘れたの?」

「うーん。」

環奈の表情が、少しだけ曇る。

「正直、まだ好きだよ。」

「環奈……」

胸がズキッと、痛くなる。

尚太君の事、内緒にしておいて、正解だった。


「でもね。尚太は、そんな私の事、分かってくれている。だから、尚太の為にも、前を向いて歩かなきゃって、思うんだ。」

環奈は環奈で、努力しているって言う訳か。

「頑張れ、環奈。」

「うん、ありがとう。心。」


そして朝礼が始まって、環奈は自分の席に戻った。

部長が、環奈に尚太君の事を聞いていたのは、気になるけれど、何も間違った事はしていない。

私は私で、堂々としていればいいんだ。


けれど、その心の隅に引っ掛った考えが、表に出る時がやってきた。

それは、週の半ばの話だった。