ついに保健室のドアに手をかけた時、山本君が小さく呟いた。

「俺、入らない方が良いかもな…………。」


私がよく分からないと視線を送ると山本君は俯いた。

「今の慧莉に俺は会わない方が良い。」


私は首を傾けると、そのまま山本君の腕を掴み保健室へと入った。

「失礼します。」

「ちょ、おい!」

私の手から逃れようと山本君は腕を振り回す。


「…………黙れ。」


もちろん私が発した言葉。


山本君は抵抗を止め、窓の外に視線を向けた。

志野先生は私達が何かを言うのを待つように黙っていた。