「―いやっ！！」
ガバッと起き上がる慧莉(ｹｲﾘ)。
息が切れ、涙が流れ落ちている。
「……ゆっ夢？」
ゆっくりとベッドから降りカーテンを開く。
気持ちとは逆に、強く輝く日光が窓から差し込む。
「眩し………。」
パジャマから制服に着替えて階段を降りた。



「おはようございます。」
「おはよう。」
キッチンに立っている人は沙由(ｻﾕ)さん。

「おはよう。」
鞄を掴んで今にも家を出ようとしていた人は悠哉(ﾕｳﾔ)さん。

二人とも慧莉の本当の親ではないが、優しく接してくれる二人が慧莉は好きだった。


「慧莉？大丈夫か？顔色悪いぞ。」
悠哉さんが心配そうに言った。
それに対し、慧莉は満面の笑みで答える。

「全然っ！元気いっぱいです！」

心配はかけたくない。

無理はするなよ、と悠哉さんは言って家を出ていった。


「慧莉、朝ご飯出来たわよ。」
「はいっ。」

沙由さんの澄んだ綺麗な声に呼ばれ、椅子に座る。


目の前には味噌汁と御飯と卵焼き。

「いただきます。」

箸を正しく持ち、行儀良く食べ始める。

キッチンからは水を流す音。
沙由さんが悠哉さんが食べ終わった皿を洗っているのだろう。


「ごちそうさまです。」
ガタッと立ち上がり、お皿を流し台へ持っていく。
「ありがとうね。」
沙由さんが優しく笑う。



「行ってきます。」
玄関から叫んだ。
「行ってらっしゃい。」
中からあの澄んだ声で返事が返ってくる。


慧莉は家を飛び出した。