そして残されたのはわたしと先輩だけ。

謎の沈黙が数秒流れた直後。


急に大きな身体に包み込まれた。
ふわっと鼻をかすめる甘くて落ち着く匂い。


え……?

な、なんで抱きしめられてる??


突然起こったことに少しパニック。
ただ、先輩のことだから理由もなく抱きついてきてるだけってところもあるかもしれない。


「え、えっと……せ、先輩……?」

名前を呼んだら、もっと力が強くなった。


「……なんだろ、無性に抱きしめたくなった」


意味わかんない。
そんなこと好きでもない子に言っちゃいけない。


変に期待度を上げられて、どうせ最後に落とされるのは見えているはずなのに。



「俺の杞羽なのに、なんか取られた気分」


少し拗ねた声。
独占欲……的な。

それをほのめかすような、こんな言い方をするのはずるくない……?