表情は相変わらず何を考えているか読み取らせてくれない、崩れない。
「……ダメって顔してないけど」
「っ、」
「そんな真っ赤な顔して、潤んだ瞳で見つめて」
自分が今、先輩の瞳にどう映っているかなんてわかんない。
というか、知りたくない。
「……なんか久々にクラッときたかも」
「へ……っ」
目の前が突然、フッと暗くなった。
その直後、唇の真横スレスレ……に、柔らかい感触。
視界は先輩の大きな手で覆われたまま。
この柔らかい感触は……おそらく唇が触れた。
思考は停止寸前。
そして、覆っていた手が退けられた。
「……唇は外したよ」
「っ、」
片方の口角を上げて余裕そうに笑う。
そして、親指をグッと唇に押しつけてきた。
「杞羽の唇やわらかくて食べたら甘そう」
なんて言いながら、その親指を今度は自分の唇にあてる色っぽい仕草。
……ぜったいぜったい確信犯。

