まだ心の準備ができてないのに、玄関の扉に手をかけようとしてる先輩。
「えっ、あっ先輩待ってくださいよ……っ!」
「杞羽キンチョーしすぎ」
「へ……、っ」
軽く腕を引かれて、顔を覗き込むように一度だけ、わずかに唇が触れた。
「……キンチョーほぐれた?」
「なっ……、先輩のバカァ……」
こ、こんな誰が見てるかわかんない場所でするなんて……!!
真っ赤になってるであろう顔を必死に隠していると、なんの前触れもなく目の前の玄関の扉が開いた。
開けたのは暁生先輩じゃない。
もちろんわたしでもない。
「わぁ、はじめまして〜!!
あなたが杞羽ちゃん?」
中から出てきた、めちゃくちゃきれいな女の人。
なんか菜津さんに似てるような……。
菜津さんをまたもっと大人っぽくしたような。
「あっ、えっと……」
「いつも暁生がお世話になってます〜!
暁生の母ですっ」

