「ねー、杞羽」
何にも変わらないある休みの日。
気づけばもう10月の中旬に入って、ようやく秋めいてきた頃。
いつもと変わらず、先輩の部屋で呑気に晩ごはんを食べていたとき事件は起きた。
「俺の母親が杞羽に会いたいって」
「……は、はい?」
えっ、いま先輩なんて言った?
思わず手に持っていたお箸を落としそうになった。
「なんかこの前、初めて母親が俺の部屋来たんだけど。杞羽の服とか見つけて女の子と住んでるのかって問い詰められた」
な、なんてこった。
いや、別に隠してるわけじゃないけど。
でもでも、もしかしたら暁生先輩のお母さんめちゃくちゃ厳しい人で、まだ高校生の分際で同棲まがいなことするんじゃありません!とか言われたらどうしよう。
「問い詰められて先輩はなんて答えたんですか?」
「彼女が来てるって言った」