「なんか、こーゆーのいいね」

わざとなのか、無意識なのか
耳元でささやくように鼓膜を揺さぶってくる。


「なに、が……ですか?」


「エプロン姿とか可愛いし、さっきと違って髪結んでるの雰囲気変わっていいかもってこと」


今朝の先輩は面倒くさそうで、人に興味がなさそうだったのに、急にこんなこと言うのはずるくない…?


きっと気まぐれな性格だからなんだろうけど…。


「あ、あんまり近いと料理しにくいので、その……あっちで待っててもらえないですか?」


「ん、わかった」


すんなり聞いてもらえて、先輩はテーブルのほうへ戻っていった。


ふぅ……危なかった。

別に先輩のことが好きだったり、意識してるわけじゃない。

けど、男の人とこんな至近距離で話すことなんて滅多にないから変に緊張しちゃう。