まだ夏休み中の8月上旬。
なんの前触れもなくインターホンが鳴った。
宅配便か何かかと思って急いで玄関の扉を開けてみれば。
「お久しぶりー。元気してた?」
「えっ、沙耶なんで?」
「いきなり突撃してみた〜。なにげに杞羽の一人暮らし部屋に来るの初めてだし?」
だからってなにも連絡なしにいきなり来なくても。
部屋散らかってるままだし。
「まあ、元気にしてるか心配になったからさ。どうせ春瀬先輩のことでウジウジしてるんじゃないかなーってね」
「ウジウジって……別にしてないもん」
「それじゃー、春瀬先輩のことはもう諦めたって解釈でよき?」
なんて言いながら、遠慮せずに部屋の中に入ってくる。
「……」
「なーに、その無言は」
「好きだけど……叶わない…から」