左手を前髪に伸ばして触ってみると、綺麗なまでにボサボサ。
朝、せっかくセットしたのが水の泡だ。
「ちょっとーー!どうにかしてよ、これっ」
わたし、学校にアイロンとか持ってきてないし、ここには鏡もないから直せない。
すると、やつはなにか思いついたようにニヤリと口元に笑みを浮かべた。
「んー、もしお前が俺にその弁当くれるっていうなら、前髪直してやらなくもないけど?」
「…っ、そ、その手には乗らないんだからっ…!」
「へー?じゃあそのまま午後の授業に行くんだ?」
「うっ……」
こいつ、絶対確信犯だっ…!
わたしが断れないってわかっててやってるっ……。
実際その通りだから、余計に悔しい……悔しいけど。
「……し、仕方ないから、今日はこのお弁当はあんたにあげるっ。で、でも、そのかわり、ちゃんとこの前髪直してよ……っ!?」
開いたままのお弁当箱をグッとやつに押し付けるようにしながらそっぽを向いて、やつの顔を頑なに見ないようにした。



