…そう、だからこそ早く離れてほしいんだけどっ……。
家族以外の男の人とこんなに距離が近づいたこともない。
「へー、それは残念。俺は結構お前のこと気に入ってるぜ、里桜」
「…っ、な、なにそれっ……。気安くわたしの名前呼ばないでよっ……」
もう、ほんとになんなの、こいつ……!
いきなり壁ドンしたり、わたしの名前を呼んだり、一体何を考えているの……。
全くと言っていいほど目の前の男が何を考えているのかさっぱりわからない。
「んー、それは無理だな。それに俺、お前の秘密、知ってから」
わたしの言葉をサラッと流して、やつはまたしても口角を上げてニヤリと口元に笑みを浮かべた。
って、は……?
やつが放った“お前の秘密”という言葉に、わたしの身体はピクリと反応した。
え、聞き間違い……?
だ、だってわたしの秘密をこいつなんかが知ってるわけ……。



