「…ん」
わたしを包んでいた温もりは短いその言葉と共に離れていく。
───ああ。
やっぱり忘れるなんて無理だ。
今のわたしには“忘れようと思えば忘れるほど思い出してしまう”っていう言葉がぴったりだと思う。
あいつの一挙一動がわたしの心の中に刻まれていく。
……そして、わたしはやっぱり弱いまま。
あの頃と全然変わっていない。
かみなりを異常に怖がるのも、そのことを“三人以外”に絶対に知られたくないと思ってしまうのも……
未だにしとしと雨が降る放課後。
わたし自身も気づかぬうちに、わたしの心は“また”密かにあいつに傾いていく───



