あぁ、もしも人間だったら私は
どんなことをしていたのかな…。

 
ーーー。


綺麗な朧月が汚れた窓から顔を見せる。

ひんやりと冷えきった床、もう既に感覚もなくなった指先。

 

どうしてだろう。毎日願ってるのに祈ってるのに、今日も人間にはなれなかった。

 

「…っこんなのいらない!!」

 

尻尾と耳を全力で引っ張るけど、上手く取れるはずもなくて、痛いだけだ。

「っ…もう、やだ」

 

私は人間に捨てられた身。

最初は、美しいだの珍しいだの、宝石のように私を見ていた目はいつからか、恐怖に怯えた目に変わっていた。

それから私は、使い古した壊れたガラクタのように扱われた。

 

「まだ痕、残ってる」

 

手首にくっきりと残っている手枷の痕。首元には未だにゴツゴツの首輪は健在している。

 

ビュー…

 

「っ、さむ」

 

冷たい風が強く吹き荒れる。

開け閉めができない窓をそのままにして、私は体を丸め目を閉じた。