「ん〜朝?」




正面から差し込む光が眩しすぎて、顔をしかめる。




やっとのことで目が慣れると、そこには全開のカーテンと…




「鬼…」




おっと違う。口をおさえて仁王立ちの彼女の様子を伺う。聞こえてないよね?まさか、うん。




「だーれが鬼ですってー?」




この地獄耳め。聴力どんだけあるんだよ。顔をさらにしかめて姉をにらんだが、そんな私はお構い無しで彼女は腰に手を当て、ずいっと身を乗りだす。




「おーそーいー!今何時だと思ってるの!」




「さあね」




「ちょっと!しっかりしなさいよ!いつも…」




なんかがみがみ言ってるので、仕方なくスマホの電源を入れ、時間を確認する。




「8時30分…最高記録更新だわ」




「パンチ1発入れても起きなかったもんねー」




「覚悟しとけよ華那(かな)姉」




「ん〜緒斗羽(おとは)が勝つシナリオは私の中に無いなぁ」



ん、今心のデスノートに書き加えて置いたから。




「華那姉…とりあえず着替えるから退出願いたい」




「いいじゃない、女同士なんだし?」




「あー蹴り1発お見舞いしたい」




「はいはい、今出ますよ」




「よろしい」




くるりと背を向ける。出て行ったのを感じとると、私はネックウォーマーを外した。




あれ、制服どこやったっけ?クローゼットを漁さる。





「緒斗羽終わっ…あんたまだそんな格好なの?」





背後から声が聞こえて、とっさに首元を隠す。




ノックもなしに入ってきた華那姉を睨んで、ドスの効いた声で早口で告げた。




「華那姉…いつ入ってきていいって言ったの?」




「いや、遅すぎだったからさ、ね?」




「華那姉の時間の感覚が短すぎるだけ」




まだ10分も経ってないだろうが。まったく。




「ごめんって」




てへぺろっ!って感じて両手を合わせてる華那姉を見ていると、怒る気も失せてくる。




「…もういいから、早く出て。あと朝ご飯はいらない」



「朝ご飯くらい食べなさいよ」



「食欲皆無」



「まったく、もう」



華那姉が頬を膨らませて退出した後、制服を着た。




キャメル色のブレザー、赤いチェックのリボンタイ、茶色のスカート。どこぞのアイドル見たいなこの制服。




「学校だる…」



とりあえずポニーテールに髪を結う。




「あ…忘れてた。」




絆創膏を貼り替えて、と。




ザァー




「嘘、雨!?」




降水確率10パーって言ってたのに…傘どこしまったっけな。




普通の傘は昨日学校に置いてきてしまったため、折りたたみ傘を探して歩き回っていると、地から沸き上がってくるような音…検討はついた。



「蓮翔(れんと)!くれぐれもドアを蹴破るなよ!」



忠告により、私の部屋のドアは2度目の被害にあうのはまぬがれた。




「悪ぃ緒斗羽姉!姉貴が2人で洗濯物取り込めって!」



蓮翔は、中2の私の弟。この家は私と華那姉、蓮翔の3人暮らし。そして…なかなかの空手一家。



そういえば、今日は月曜日。私はどうってことないが、なんで蓮翔がここにいるんだろ?




「蓮翔、あんた学校は?」




「俺の学校、今日は合唱コンの振替休日。あと姉貴が『緒斗羽は遅刻魔だから、運動も兼ねてスクワットさせなさい』だとか」




「華那姉…後でしばいたろ」




あんたにスクワットさせてやるよ。200回くらいな。