カッチャンは頭を下げ続ける。

「王子、私、嘘つきました」

「ん?」

鼻声なので、微妙に聞こえなくて。

思わず、カッチャンに近づく。

「私、彼氏いません」

「ん?」

聴き間違いかと思った。

カッチャンはカバンからスマホを取り出して。

彼氏とのツーショット写真を表示させて。

俺に見せた。

「この人、私の弟です」

「・・・ん?」

涙で溢れるカッチャンは袖で涙をぬぐう。

「私が王子のことずっと諦められなくて。弟に相談したら、『じゃあこうしよう』って勝手にツーショットの写真とそのメッセージ送ったんです」

「…ぅん? どういうこと?」

「王子、私に彼氏なんていません。その写真に写っている奴は勝又柊人(かつまたしゅうと)。長野で農業している弟です」

急にカッチャンは大声を出す。

「え?」

俺も反射的に大声が出る。

「王子が好きです」

再び泣き出すカッチャン。

彼女の言葉に「うわっ」と悲鳴が出た。


「それは、両想いってことでいいの?」

「はい。流石に天然でもわかりますよね?」

まるで、馬鹿にするようにカッチャンが言うので、

「わかるよ!」

と大声を出す。


カッチャンはしばらく泣いて。

俺の顔を見て。

「やっと、繋げますね」

と、言って。

両手を差し出した。

「えーと…。何だっけ?」


状況がつかめずに。

首を傾げると。

カッチャンは小さく「馬鹿!」と言って。

俺の手を握った。

「堂々と、好きな人の手、握れますね!」


おわり。