校門を通り、靴箱に着く。

凉くんの靴箱には、既にたくさんのチョコが入れられていた。

「…わ、ビックリした…」

凉くんが一つ一つ、手に持って回収する。

「凉くん…それ…」
「ん?」

受けとる…の?

小さく呟いた乃愛に、凉くんは一瞬キョトンとして…ニコリとほほ笑んだ。

「嬉しいなぁ」
「え?」
「乃愛ちゃんが焼きもちやいてくれてる」

凉くんはチョコを全て回収すると、生徒会室の近くに置かれた大きめのボックスへ全て投入した。

「凉くん…これ、なあに?」
「バレンタイン限定、チョコレートボックスだって…僕も最近知ったんだけど、ここに入れられたチョコは希望者が自由に持っていっていいんだって」
「え?…何のために…?」
「ほら、チョコが苦手な人とか、貰えないって人がいるでしょ?…でもせっかくの好意を捨てるわけにはいかない。だからこのボックスに入れて、誰か他の人に貰って食べてもらおうっていうのが目的らしいよ…画期的だよね」
「へぇ…」

えっと…よく分からないけど、とにかく、凉くんは他の子からのチョコを貰わないって事だよね。

乃愛はホッとする。

「―――で、乃愛ちゃん?」
「…ん?」

凉くんが両手を乃愛に差し出した。

「乃愛ちゃんは僕にチョコレート、くれないのかな?」

こてんと首をかしげながら、凉くんが言った。
これは…。

…ほ、本当の事…言わなきゃ、だよね?

乃愛は両手を合わせて、ごめんなさい!と叫んだ。