「3年F組~コスプレ喫茶やってまーす!」
アタシがチラシを配りながら校内を歩く。
着替えてからすぐ衣装係の子達に、クラス展示の宣伝をしてきてほしいと頼まれたのだ。
「おい、光も手伝えよな!」
「…お前の格好、何だそれ」
「は?」
アタシは近くのお化け屋敷の展示付近にあった、黒いガラスで自分の姿を確認する。
頭には黒のヴェール。
大きく折り返された白の襟元…丈の長い黒のワンピース。
片手には十字架。
「どこからどう見ても『シスター』だろ」
「なぜ吸血鬼とシスターが仲良くチラシを配らないといけないんだ…」
「仕方ないじゃん、これしか残ってなかったんだよ」
スカートをヒラヒラさせながらアタシが呟いた。
左右の太ももあたりまでスリットが入っているこのスカート部分、動きやすくて気に入ってる。
なぜか、すれ違った男子が口笛を吹いてアタシを見た。
「…ん、どうした?」
ふと、光がアタシを見つめているのに気づく。
「…ちょっとこっち来い」
グイッと腕を掴まれた。
不思議に思いながら光についていくと…そこは校舎裏だった。
ここは出店しているクラスもなく、がらんとしている。
「光?」
「そんな格好」
「え?」
「…そんな格好、俺以外に見せるな…阿呆」
―――え?
トン、と壁際に追い詰められるアタシ。
光の目が、あやしく光った。