つー…と祐二君の指が、わたしの手をなぞります。

「ひゃ…くすぐったいです、祐二君…」
「でもこれなら、眠くならないでしょ?」

祐二君はそのままわたしの手を握ったり、またなぞったりを繰り返します。

…これは…。

「ゆ、祐二君…そのぅ…」
「どしたの愛美先輩」
「眠気は吹き飛びますが…ドキドキしすぎて、今度は映画に集中できなくなりました…」

祐二君が、ニヤリと意地悪な笑みを浮かべます。

「あれ、意識してる?」
「はい…祐二君からされる事、全部に…」
「っ…可愛すぎ…」
「…え?」
「…なんでもー?」

祐二君がお顔を赤くさせながらそっぽを向きます。

結局、映画が終わるまでわたし達は手を繋いでいました。

「これが恋愛映画だったら、もっと違う空気になれたのになー」

映画が終わり、帰路についていると、祐二君がそう言いました。

わたし達の手はまだ繋がれています。

「違う空気に…ですか?」
「うん。例えばキスとか?」
「…次は恋愛映画にお誘いします」
「だから先輩、何で変なところで積極的なの…」
「だって…祐二君とキスしたかったです…」

すねたようにそう言うと、祐二君がお顔を押さえていました。
どうされたのでしょう。

祐二君はお顔から手を離してわたしを見つめました。

「祐二君、どうされ―――」

ふと、祐二君のお顔が近づいてきて…。


ちゅ…。


小さなリップ音。

祐二君のお顔が離れていき、わたしは唇に手をあてました。

「…ふふふ…」
「…なに笑ってるんですかー?先輩」
「ごめんなさい、嬉しくて…」
「…っ…ほら、さっさと帰るよ!」
「はぁい」

祐二君は優しいです。

わたしがしてほしい事をいつもしてくれます。

いつかわたしもお返しができたら…そう強く思えた、そんな一日でした。