7月のある日。
恋人の祐二君が、風邪を引いてしまいました。

「と、いう事でわたし、看病にまいりました」
「いや、帰って先輩」

バタンッとお家のドアを閉める祐二君。
わたしはめげません。

ドアをトントンと叩きます。

「祐二くーん!わたし看病させていただくまでここから動きませんからね~」
「ケホッ…本当に大丈夫だから帰って先輩!」
「なぜそんなに看病を拒否されるのですか?」
「うつるからだよ!察して先輩!」
「わたしにうつせば早く元気になります!」
「ダメ!彼女にそんな事できな―――」
「なに玄関で騒いでんだよお前ら」

突然 現れた第三者の存在に、わたしは驚きます。

「一弘君…」

そこには、祐二君の双子のお兄様、一弘《カズヒロ》君がいました。

ガチャリ、と一弘君が鍵を使ってドアを開けます。
ドアにもたれていたらしい祐二君が転びかけていました。

「わっ…と…」
「祐、寝てろっつっただろ」
「分かってるよ弘…今日バイトじゃないの?」
「忘れもんしたんだよ…おい、月寺」
「…あ、はい?」
「コイツの看病、頼むわ」

一弘君が祐二君を指差しました。

「ちょ、何勝手に…ゲホゲホ…」
「ほら、部屋行っとけ…月寺、俺が帰るまでコイツの面倒、見てやってくれ」
「は…はい!お任せください!」
「っ…あー、もう!勝手にしなよ…コホッ…」

咳き込む祐二君の苦しそうな顔にハッとします。
その直後、わたしはお邪魔します!と玄関に足を踏み入れました。