ザァザァと雨の音が辺りを包んでいました。

「ねえ先輩?」
「はい?」
「僕達あと、何回こうやって相合い傘できるのかな」

呟いた祐二君は、どこか寂しげでした。
わたしの視線に気づくと、にこりと笑います。

「ほら、来年の今頃、先輩はもう大学生じゃん?こーやって一緒に帰れるのももう少しってね」
「祐二君…」

わたしは来年から遠くの大学に通います。
両親の意向で、寮に暮らす事も決定しました。

祐二君とは遠距離恋愛になります。

それでもわたしは平気です。
祐二君と会えなくて、寂しくなると思うけれど…。

「祐二君…約束、覚えてくれていますか?」
「…約束…?」
「あの約束があれば、わたしは…」

例え遠く離れていても、祐二君と心で繋がれると…そう思うんです。

ふと、ほっぺたに柔らかな感触がしました。
一瞬で離れていったそれは、祐二君からのキス…。

わたしは祐二君を見つめました。

「先輩との約束、僕が忘れるわけないじゃん」

少し恥ずかしそうにわたしから視線をそらしながら、祐二君が言いました。

「それと、僕 決めたから」
「はい?」
「先輩が卒業しても、また会いに行く」
「本当ですか?嬉しいです」
「電話もLINEもするから、ちゃんと返してよね?」
「もちろんです祐二君」

それならよし。祐二君が言いました。

二人でほほ笑みます。


それからきゅ、と手を繋いで、わたし達は歩き出したのです。