「僕、雨って嫌いなんだよね」

祐二君が呟きました。

「そうなんですか?」
「カエルは出てくるしジメジメしてるし髪の毛すぐハネるし…あ、先輩そっち危ないからこっち来て」

優しく肩を抱かれて、私は道路側から歩道側に移動させられました。

「祐二君は紳士さんですね」
「…あのね、これは彼氏なら当然の事なの」
「そうなんですか?祐二君は物知りさんですね」
「はぁ…」

傘を持ったまま祐二君がため息を吐きます。
私は首をかしげました。

「祐二君?」
「んーん、何でもない。…ところでさ」
「はい」
「相合い傘、楽しい?」

その祐二君のお言葉に、私は目を輝かせました。

「楽しいです!祐二君と並んで下校できますしたくさんお話もできますし」
「…そ、そう?」
「はい!それに…いつも人気者でお友達がたくさんいる祐二君を、一人占めできるのが嬉しいです」
「っ…!」

―――わたし達、3年生と2年生でクラスも違いますし…登下校とお休みの時間しかお側にいれなくて寂しかったのです。

手をもじもじさせながらわたしがそう言うと、祐二君はとすん、と抱きつくようにわたしへともたれかかってきました。

「あーもぉ…可愛い…愛美先輩」
「?祐二君?どうしました?」
「…んーん…なんでもない」

すりすり、と祐二君がわたしに甘えてきます。

なんて可愛いのでしょう…。

思わず頭をなでなでしてしまいました。

「先輩の手…気持ちよくて好きだよ、僕」
「まぁ…ありがとうございます、祐二君」

じゃれあうような時間はあっという間でした。

祐二君がわたしから離れていき、わたし達は再び歩き出します。