7月のある日。

2年A組の教室に設置されたクーラーが壊れた。

…と、いっても停止しているわけではない。

クーラーは働き続けていた。
異常な程に。

「何でこの教室だけこんな寒ぃんだよ…」
「だから、内部にある温度の調節部分がおかしくなってるんだから仕方ないでしょ」

彼氏である日野 一弘《ヒノ カズヒロ》の恨めしそうな声に、私…辻本 あかり《ツジモト アカリ》が素っ気なく答えた。

教室が壊れたクーラーの冷気で、真冬並みの極寒と化した。

今は一時限目の真っ最中のはずなのだけど…先生が修理会社に連絡をしに行ったから自習となっている。

生徒の姿がまばらなのは、この間に暖を取りに別の場所に移動したから。

私もそうしようかな…と考え、席を立とうとした時。

こっちに向けられた視線に気づく。

一弘が私をジロジロと見つめていた。

「あー無理…あかり!」
「な…なに?」
「ちょっとこっち来い」
「え!?ちょっと…!」

ぐいっと腕を掴まれ、そのまま一弘に抱き締められる―――!