2人は10歳までは全く同じ人生をたどった。
違ったのは彼を助けてくれるヒーローがいたかどうかだ。
彼の前にはヒーローは現れず、当時特別な気持ちを感じていた女の子に何もすることができず、夏休みが終わると彼女はいなくなっていたのである。
彼は理解者を得られないまま体と知能だけは成長していった。
妬みによるクラスメイトからのいじめと理解してくれない教師や母。
だんだん彼は磨耗していき、不登校になった。
その時に見つけたのが保育園にいた時の将来の夢であり、父の研究のことだった。
タイムマシンを作ることが彼の生きがいになっていった。
母は彼に期待することはやめ、自由に進路を選ばせた。
その点に関しては彼のほうが幸運であったかもしれない。
彼は大学卒業後研究者となりタイムマシンの研究をしていた。
30歳の時、小学校の同窓会が開かれた。友達などいなかった彼だが、彼女に会えるかもしれないという期待だけで参加した。
果たして彼の行動は正解であった。彼女は当時の面影そのままで彼の横に座った。
こちらから話せないでいると、話しかけられた。
昔話や現在のこと。彼女は普通の会社員として働いており、彼はタイムマシンの研究をしていることを伝えた。話は弾み、彼らが失った時間を取り戻すのに時間はいらなかった。
数回の食事の後、彼女から告白された。全く女性経験のない彼は食事に誘うこともできず、すべて彼女がしてくれたことであった。
32歳の時、タイムマシンの完成に必要な性質を持つ物質が発見され、後はその物質が送られてくるのを待つだけに。彼女との交際も順調で、タイムマシンの完成の際にはプロポーズをしようと考えていた。