その男は疲れ果てて電車の中で項垂れていた。
研究所に勤めているが、未だ成果がないまま約束の10年が経とうとしていることに焦りが隠せず。毎日終電まで無意味とも言えるような実験を繰り返している。
10年前、母に自信満々でタイムマシンを作ると言った自分はどこにいったのだろう?
隣に誰かが座ってきた。
チラッと見ると見慣れた顔があった。誰だっただろうか?今朝も見たような…。

「久しぶりだな。元気か?ってそんな様子じゃないよな」

どこかで見た……。それは…朝見た鏡?
そうだ。この隣の男は自分とほとんど同じ顔をしている。
自分もかなりやつれているが、それ以上にやつれている。

「もう俺が誰だかわかるだろ?そう、俺は未来の“お前”だよ」