「やばい。今お昼行ってきたら修羅場見ちゃったんだけど!」

オフィスのカフェテリアスペースで朝作ったお弁当を食べていると、同僚の麻衣が意気揚々と入ってきた。

修羅場というと意中の人を巡って2人が取っ組み合っているイメージだ。

亜耶が麻衣の話をよく聞いてみると、ただ単に隣の席のカップルが別れ話をしていただけのようだ。

「え、それ修羅場って言う?」

「修羅場だよー!あれは男が浮気してたパターンだね!」

「はぁ…」


今日は仕事が山積みだったせいか遅めの昼食をとっていた亜耶。

当然ながらカフェテリアスペースには同じチームのメンバーがポツポツいるぐらいだから、麻衣の声は思いのほか響いていた。

「なんか麻衣さん嬉しそうですね。」

「ふふっ。他人の話だから笑ってられるけどね。」

「じゃあ自分のことだったら?」

「うーん…。浮気の度合いにもよるよね。」

亜耶の目の前でご飯を食べていた明人が麻衣の話に乗っかる。

明人は亜耶の1つ下の後輩で、お弁当仲間だ。

男の子なのに毎日彩り豊かなお弁当を作ってくる。

おまけに少女漫画の趣味まで合うという、いわゆるオトメンのような印象だ。

「浮気の度合いって…。そもそも麻衣さんはどこからが浮気なんですか?で、どのラインでアウトなんですか?俺だったら彼女が他の男と出かけた時点でアウトなんですけど。」