夜空に君という名のスピカを探して。

『だって宙くんと私って、口を開けば貶し合いじゃない?』

「だいたいは、お前が喧嘩を吹っかけてきてるけどな」

『お互いさまでしょ。とにかく、宙くんが好きになる人は、私とは正反対の性格なんだろうなぁーって考えてたら、前田さんの顔が真っ先に思い浮かんだんだよ』

 考えていたことはまったく違うことだが、適当に宙くんに話を合わせる。

「タイプと好きになるやつは違うだろ」

『まぁ、そうかもね』


 私もまさか、この冷淡毒舌男を好きになるとは思わなかったから。宙くんは「そうだよ」と言いながら、教室に向かって歩き出す。


「加賀見くん」

 教室に戻ってくると、前田さんが駆け寄ってきた。その光景をクラスメートは興味津々にチラチラと見ている。

「……前田さん」


 宙くんは胸の高鳴りを隠すように、そっけなく前田さんの名前を呼んだ。

 私には息をするのと同じくらいにいくらでも憎まれ口を叩けるのに、彼女が相手だと言葉が出てこないみたいだ。

彼女の前でだけ見せる、宙くんの特別な表情に落ち込む。

傷ついている自分の気持ちに、気づかないほど鈍感じゃないから嫌になる。


「加賀見くん、その……そろそろテストがあるよね?」

「え? そうだな」


 だからなにが言いたいんだ、という彼の心の声が聞こえてくる。

分かっていない様子の宙くんに、私は鈍感だなぁと苦笑いした。

 前田さんはきっと、テスト勉強を一緒にしようと誘いたいのだろう。

それも勉強というのは口実で、ただ一緒にいたいから。

喜ばしいことに、ふたりはきっと両想いだ。そう、喜ばしいことに。