「まさかお前、消えたりしないよな…?」


 ブワッと風が吹くのに混じって、彼の消え入りそうな声が聞こえた。

でも、しっかり私の耳に届いた。

どうやら、宙くんも私と同じことを考えていたらしい。


 消えるという単語が、私の心に影を落とす。

その可能性を考えていなかったわけではなかった。

だけど、いつからだろう。

宙くんとこのままずっと一緒にいられるんじゃないかと思い始めたのは。

覚えていないけれど、いつの間にか彼の中にいることがあたりまえになっていた。


「よく考えてみれば、お前がずっとそばにいる保証なんてないんだよな……」

『私も同じことを考えてたよ』


 私たちの間に重い空気が流れる。

それに耐えられなくなった私は『でも、変な幽霊から開放されてせいせいするでしょ!』と笑っておどけてみせた。


「…………」


 なのに、訪れたのはまたもや沈黙。

てっきりよく分かってるじゃないかと、いつもみたいな毒舌が返ってくると思っていたので驚く。

 こんなときに限って、なにも言わない彼を恨めしく思った。

だって寂しいなんて、私に言う権利はない。

この世にいない私は、彼と一緒に未来を歩むことができないのだから。

それに宙くんも、私から好意を持たれても迷惑だろう。

だからこのまま友人として一定の距離感でいるべきなのに、君の沈黙が私との別れを惜しんでくれているようで忘れたくても好きだという気持ちが膨れ上がってしまう。