夜空に君という名のスピカを探して。

『誰かに望まれないと、私たちは自由に夢を持っちゃいけないの?』

「え……?」


 声には当惑の調子がこもっており、それが諦めきれない夢と定められた将来との間で迷っている彼の気持ちを表しているように思える。


 私の人生なのにと、悔しくて涙したあのときの気持ちが蘇る。

世界はどうしてこんなにも、安定や常識に囚われるんだろうって。


『私はね、物書きになりたかったの』

「前にも言ってたな。小説家ってことか?」

『うん、そんな感じ。それをお母さんに打ち明けたんだけど、こんなのどうやって食べていくの? ダメに決まってるじゃないって言われちゃったんだ』


 そう、そう言われて私は家を飛び出した。

目的地なんてないけれど、少しでも遠くへ行きたくて必死に走って、走って、走った。

 このときの私は行き場のない苛立ちの矛先を見つけられずに、がむしゃらに走っていた。

でも、それだけじゃない。

きっともうなにを言っても無駄だと、向き合うことから逃げたのだ。

その結果、私は夢も命も失ってしまった。

 あぁ、そうだ。

ぼんやりとしていた私が死んだ瞬間、それはこの記憶の先で起きた。

さっき宙くんと通った階段下の道路で、目が眩むほどの白い光に包まれた私はギュッと目をつぶる。

耳をつん裂くようなスリップ音と竦む身体に訪れたドンッという強い衝撃に、私の身体は痛みを感じる間もなく宙へと投げ出された。

そして地面に叩きつけられると、テレビの電源が切れるようにプツンッと記憶が途切れたのだ。


『…………』


 そうだったんだ……。

私は車に跳ねられて死んだんだ。

 黙り込んだ私を心配してか、「楓?」と声かけられる。

今は自分に起きた衝撃の事実に嘆くよりも、伝えないと。

彼がなにもかも失う前に、後悔で心を殺してしまわないように。