夜空に君という名のスピカを探して。

「ミルク下さい」

「かしこまりました」

 店員が丁寧にお辞儀をして去っていくと、ダイくんとカズくんが不思議そうな顔をする。

「宙、ブラックコーヒーを頼んだのにミルク入れんのか?」

「あぁ、ちょっと、予想以上に苦くてな」


 ダイくんにそう返事をして、宙くんはメガネを人差し指で直すと苦笑いを浮かべる。 

これは勝手な億族だけれど、もしかしたら私のためにミルクを入れてくれたのかもしれない。

 そう思ったら、胸がじんわりと温かくなるのを感じた。

 酷いこと言ったのに優しくしてくれてありがとう、宙くん。

私の声なんてもう聞きたくないと思うから、今は言葉に出さずに胸の内でそっと感謝した。


「ショートケーキ、本当に美味しいな」


 宙くんの感想に、私もうんうんと心の中で相づちを打つ。

口の中で溶けていくスポンジは、まるで雪を食べてるかのようだ。


「甘いものは頭をスッキリさせてくれるからね」

「そうそう、カズの言うとおり。糖分摂ると幸せホルモンが出るらしいしな」

「ダイにしては珍しく、物知りだね」

「おう、まあな……って、やっぱりさりげなく俺のことディスってるだろ」


 そっか、ふたりは宙くんのためにここに連れてきてくれたんだ。

それに気づいた宙くんも、顔をほころばせる。

「お前たちのやりとりは漫才みたいだな。おかげさまで悩んでるのがバカらしくなったよ」

「それなら、ダイをディスったかいがあったよ。今日はリフレッシュしよう」

「あぁ、ありがとう」


 フォークでもうひと口、ケーキを頬張る宙くんの口角が自然に上がる。

向かい座るダイくんは「やっぱり俺をディスってたのかよ!」と騒いでいた。

それを見て宙くんは耐え切れずといった様子で、ぶはっと吹き出す。