夜空に君という名のスピカを探して。

「なんだ、この注文しにくいメニューは」

 顔を引き攣らせる宙くんに、くすっとカズくんが笑う。

「ここ定番だと思うけど、苺ショートケーキが美味しいらしいよ。フワフワで口の中でとろけるって、雑誌に書いてあった」


 情報通のカズくんの見つけたこのカフェでは、なんの曲かは分からないけれどクラシック音楽が流れており、気持ちを落ち着かせてくれる。

宙くんもゆったりと、くつろいでいるように思えた。


「なんか俺、緊張してきた……」


 ダイくんは落ち着かないのか、ソワソワして店内を見渡している。

お店には意外にも男性客がちらほらいる。

このお店にいるというだけで皆、上流階級の貴族のように見えてくるから不思議だ。


「ちなみにダイ、ショートケーキの名前は【苺さんのフワフワ夢見ごごちショートケーキ】だから、注文よろしく」

「えっ、俺がフワフワなんちゃらを注文すんの? 似合わないだろ!」

「ははっ、冗談だよ。確かにダイは洒落たカフェよりフードコートのほうがしっくりくる」

「おいカズ、さりげなく俺のことディスってないか?」


 確かに失礼だけど、ダイくんにはこういう場所は似合わない気がした。

それに比べて宙くんとカズくんは、こういう場所が異様に似合うな。

 そんなことを考えていたら「ご注文はお決まりですか?」と、店員が気を利かせて声をかけてくる。


「宙、なににする?」

「カズに任せる。飲み物はブラックコーヒーで」

「分かった、ダイは?」


 カズくんの視線がメニューを見つめて固まっている彼に向けられる。

ダイくんはしばらくうーんと唸ったあと、お手上げな感じでメニュー表を手放した。


「任せる!」


 どうやら、自分で頼むにはどれも勇気がいる名前だったらしい。

 そうこうしているうちに、カズくんが皆の注文をスマートに済ませる。

それから十分ほどで、飲み物とケーキが運ばれてきた。

 宙くんは綺麗な所作でカップに口をつけると、グロテスクなほど黒い液体を口内に流し込む。

深い苦味が舌の上に広がり、私は思わずうぐっとうめいてしまった。

 苦いものは苦手なので生まれてこのかた、コーヒーなんて飲んだことがなかった。

誰が好き好んで、こんな体に悪そうな飲み物を摂取するのだろう。あぁ、ここにいた。

 げんなりとしていると、宙くんが軽く手を挙げて「すみません」とテーブルの横を通り過ぎようとした店員を呼び止めた。