夜空に君という名のスピカを探して。

『私たちには意思があるんだよ? 誰かに強制されたって、心までは騙せない!』

「……お前になにが分かるんだよ」


 つい声を荒らげた私に返ってきたのは、地を這うように低く怒りに満ちた声だった。

 私、言い過ぎてしまったかもしれない。

彼の姿が自分に重なって見えて、熱くなりすぎてしまった。

でも、ただ宙くんが心配だっただけなのだ。彼のの苦しみか、私には痛いほど理解できるから。


「死人の幽霊のお前には分からないだろうけどな、そんな簡単な話じゃないんだ!』

『どうして? 宙くんは天文学者になりたいって、もう答えを見つけてるのに……』

 私の言葉に、宙くんの心がピリピリと怒りに静電気を纏うのが分かる。


「俺には背負わなきゃいけないものがあるんだよ。俺だって心のままに生きられたらって思うけど、できないから悩んでるんだ! いっそ死んだほうが楽だと思うくらいに苦しくても、俺はいまさら道を変えられないんだよ!」


 彼は自分の怒りで、自分自身を傷つけているように見える。

それが痛々しくてどうにか助けてあげたいと思うのに、彼のために放った言葉はすべて彼を傷つけることしかできなかった。


『っ……死んだほうが楽だなんて……』


 そんなわけない。

そこまで言葉を紡げなかったのは、そう言わせてしまうほど宙くんを追い詰めてしまった罪悪感からだ。

 ズキンッと心臓が軋む音がする。

死んだ私には、悩む未来も不安もない。正確に言えば、その機会を失ってしまった。

今思えば将来のことでお母さんとぶつかったことも、恵まれていたことだと分かる。

だって死んでしまったら、悩む以前の話になってしまうから。


「しばらく話しかけないでくれ」


 彼はすごく怒っていた。それと同時に悲しんでいたのだと思う。

それを胸の痛みと重苦しさから感じた。

 宙くんごめんね。

だけど私、君の気持ちが分かるから、後悔して欲しくなかったんだ。


 そんな弁解すら、する機会も与えられずに。

私たちは家に着いても、ご飯を食べても、ベットに入っても、ひと言も言葉を交わすことはなかった。

それは宙くんと重ねた夜の中で、いちばん静かな夜だった。