夜空に君という名のスピカを探して。

『加賀見くん、急にどうしたの?』

「お前の言う今だからこそ経験しなきゃいけないことって、明日のカラオケも入ってるんだろう。友達と過ごす時間がどう大切なのかは分からないけど、楽しめるよう努力はする」


 やっぱり、彼の頭は固い。

努力してどうこうなる問題ではないし、心のままに楽しんでほしいのだけれど、まだ難しいようだ。

でも、知ろうとしている。

誰もが持っているはずの楽しい、嬉しいという感情を取り戻そうとしているのは伝わってきた。

 だから、これから知っていけばいい。

友達がどんなに素敵な存在で、恋がどんなに心を満たしてくれて、楽しいと思うことが生きてるって感じられることなんだってこと。


「さっきも曲は合格点だった。他の選曲も教えろ、幽霊」

『それはいいんだけど……。私は幽霊じゃなくて、楓だから。ちゃんと名前で呼んでよ』

「気が向いたらな、幽霊」

『もう!』


 この調子で軽口を叩き合いながら、朝方になるまでたくさん曲を聞いた。

そのたびになんの主題歌だったとか、CMに流れていただの、加賀見くんが知らないことはなんでも話した。

いがみ合う私たちの距離が、少しだけ近づいた夜だった。



 翌日の放課後、風間くんと佐久間くんと一緒に駅前の『カラオケにゃんにゃん』にやってきた。

自動ドアをくぐると、店内にはジャカジャカと最近の流行りの曲が流れている。

加賀見くんは物珍しそうに辺りを見渡しながら、ふたりのあとについてカウンターまで歩いていった。