夜空に君という名のスピカを探して。

「こんなことがありえるのか? 幽霊が俺に憑依? これは夢か? そうに違いない」

『落ち着いてよ、加賀見くん。私だって、気がおかしくなりそうなんだから』


 どうして死んだのか、どうして幽霊になって加賀見くんに取り憑いたのか、分からないことだらけで発狂しそうだ。

いっそ夢だと言われたほうが納得できそうだが、その言葉で片づけるには音も感覚も匂いもすべてにリアリティがありすぎる。


「──って、そろそろ出る時間じゃないか!」

 急にスイッチが入った加賀見くんはハンガーにかかっている制服に着替えて、机の上にある筆記用具やスマートフォンをスクールバックに詰め込む。


『加賀見くん、高校生だったんだね』


 彼の着ている制服は、私が住んでいた場所の近くにある進学校のものだった。

それをつい最近も見た気がする。

それはいつだっただろうと思考を巡らせていると、加賀見くんがそれをぶった切る。


「そうだ、俺には幽霊と話している時間は微塵もない」


 宙くんは慌ただしくベットの隣にあるナイトテーブルに駆け寄ると、その上に乗っているメガネを手に取ってかけた。

その瞬間、視界が驚くほど鮮明になる。


『おおっ』

「急に大きな声を出すな、うるさいぞ幽霊」

『私、もともと目はよかったから、メガネをかけたときの感動がですね……』

「くだらない、いちいちそんなことで騒がないでくれ」


 うんざりしている様子の彼にそこまで邪険にしなくてもとむくれていると、身体は私の意思に構わず部屋のドアの横にある鏡台へ移動する。

 ついに姿が拝める。そう思ってワクワクしていると、その瞬間が訪れた。


「お前のせいで、朝から災難だ」


 文句を言いながら制服のネクタイを締める彼の姿を見て、私は息を呑んだ。

黒曜石のような落ち着いた光沢を放つ切れ長の目に、スッと通った鼻筋。

凹凸のない頬骨にシャープな輪郭。

どれにおいても整いすぎて、冷え冷えとした印象を与える端正な顔立ちがそこにあった。