夜空に君という名のスピカを探して。

「あのね、私……。事故に会う前に宙くんに会ってたんだ」

「え、事故に会う前って、俺に憑りつく前ってことか?」

「そうだよ。事故にあった日に、公園まで続くあの石段で宙くんとすれ違ってたの」

「ははっ、すごいな」

 宙くんは私の手を握り、困ったように笑う。

「俺たちは生まれた日も同じで、ありえない出会い方をして……。五年経って、偶然にもここで再会した。いや、偶然じゃないな。楓の言う通り、俺たちは運命で繋がってる」

 それは他動的なものではなく、私たちのお互いを思う気持ちが引き寄せた運命。

信じる力が、私たちを引き会わせてくれた。

「宙くんに出会うために、私はきっと生きていたんだね」

「俺も楓に出会うために、今までの俺があったんだと思える」


 そう、物語はこれからだ。

再会を夢見て終わるあの小説のエピローグの先は、これから私たちふたりで綴っていく。


「私、この小説の続編を書こうと思う」

「へぇ、どんな話にするんだ?」


 宙くんが興味津々に聞いてくる。

それが嬉しくて、私は背伸びをして宙くんに顔を近づけるとニッと笑った。


「それは、これからの私たち次第かな」


 そう言った私に赤面した宙くんは「また、俺たちの話を書くのかよ」と頭を掻く。

 君との物語なら、いくらでも書けそうだ。

始まった恋の行方。

追い始めた夢は違えど、私たちは手を離さずに共に歩んでいく。

そして、もっともっと君に恋をする。