夜空に君という名のスピカを探して。

「それから宙くん、私に伝えたいことがあるって言ってたでしょう?」

「あぁ、言った」

「その……そろそろ聞いてもいい?」

「わ、分かった」 


 緊張しているのか、宙くんは視線を彷徨わせながら深呼吸をした。

それを何度か繰り返して、ようやく彼は私の目をまっすぐに見つめてくる。


「俺は、楓が好きだ」

「っ……」

「いつからと聞かれても分からん。星を見上げるとき、ご飯を食べるとき、下校中もなにをしてても、楓がいないと世界が褪せて見える。楽しくないんだ」

「私も……」


 彼ともう一度会えたら、絶対に伝えようと決めていたことがある。

私がずっと秘めていた想い。

あの頃は旅立つ人間である私に伝える資格はないと思って言えなかったけれど、今なら言葉にしてもいいはずだ。

私と彼はこの世界で、これから先も同じ時を刻んでいけるのだから。


「私も宙くんが好きだって、ずっと言いたかった」

「──楓っ」


 もう、言葉は必要ないと思った。

私たちはふたりでひとつだったかのように、隙間もないほど抱きしめ合う。

服の上から感じた体温が、ゆっくりと溶け合う。

私が幽霊として彼の中にいたときと同じように、今の私たちは触れ合う部分から想いを共有していた。

どちらのものとか、個々という概念はもはやない。


「私たち、本当に運命で繋がってたんだね」

「そうだな……」


 彼とこの世界で巡り合えた喜びに、ハラハラと涙が流れる。

それを宙くんの指が優しく拭ってくれた。

私は少しだけ彼から身体を離して、その頬に手を伸ばす。

触れた体温に、彼の存在を改めて感じた。