夜空に君という名のスピカを探して。

 でも、もう限界だ。

君の声が聞きたい、君に触れたい、伝えたい、私の気持ちを──。

 一歩、君に向かって足を踏み出した。

君との距離は数メートル、私はニッと笑みを浮かべて声をかける。


「スピカは見つけられましたか?」

「え……?」

 振り向いた彼は、夢から覚めたような目でこちらを見ていた。

高校生のときにかけていた眼鏡は、今はかけていない。

コンタクトレンズにでも変えたのだろうか。


「誰だ、お前」


 眉を寄せて不審な目を向けてくる彼に、私はふふふっと笑う。

彼は私の姿を知らないので、急に話しかけられて怪しんでいるに違いない。


「スピカって乙女座のことらしいです。あ、ほら……北斗七星とアークトゥルスを繋いだ長さ分の……えーと、あれだ!」


 私は彼に教えてもらったようにスピカを見つけると、木星の下で輝く星を指さした。

でも彼は星ではなく、私をじっと見つめて真意を探るような顔をする。


「星に詳しい……んだな」

「いや、全然詳しくないんです」

 背中で手を組んで、彼の隣に並ぶ。

頬に彼の視線を感じたが、気にせず私たちにとって特別な星──スピカを見つめた。


「は、はぁ?」


 不機嫌そうな声を出す彼に、私は変わらないなと笑った。

それから彼に向き直るようにして立つ。

すると、彼がなにか言いたげな顔をしていることに気づいた。

私は由美子ほど勘が働くわけではないけれど、たぶん彼は“もっとわかりやすく言え”と文句を言いたいのだろう。