あの月が丸くなるまで

「着たわよ」

 試着室のカーテンを開けると、上坂が目を丸くした。その上坂も、制服ではないジャケットを着ている。こっちは、文句なしにかっこいい。スラックスは制服のままだけど、それがまたカジュアルなスーツっぽく見えて、いかにもセレブな感じ。

「……変?」

 無言になってしまった上坂に声をかけると、我に返ったようにぶんぶんと首を振った。


「ううん、めっちゃ、似合う。すげー、可愛い」

 言いながら、近づいてきた上坂が私の背中に手をまわす。

 え? 

 抱きしめられるようなその姿勢に驚く暇もなく、くん、と髪を引っ張られる感覚。

「うん、こっちの方がいい」

 離れた上坂の手には、私の髪を止めていたゴム。ああ、髪をほどいたのか。

 ……不用意に、近づかないで欲しい。