あの月が丸くなるまで

「ごめん、上坂。今日はお弁当作れなかったの」 

 震えそうになる声を押さえて、いつもと変わらない調子で言った。こんなの……上坂には食べさせられない。



「あら、蓮、かわいそ。お昼ないの?」

 わざとらしく言った青石さんが、上坂の腕に自分の腕を絡める。

「きっと梶原さん、お弁当なんて作るの、もう嫌になっちゃったのよ。無理して女の子っぽいことするから、続かなかったのね。それより、私たちもう帰るとこだから、どっか食べに行こうよう」

 さっきとはまるで違うトーンの、鼻にかかった甘い声。私には絶対にできない……女の甘え方。


「じゃ」

 私は、そのまま足早に昇降口へ向かう。さっさと、その場を離れたかった。

 と、後ろから腕をひかれる。振り向くと、上坂が私の腕を掴んでいた。青石さんが、驚いたように後ろで固まっているのが視界の端に映る。そのさらに後ろに、冴子が黙って様子をうかがっているのが見えた。